私の住んでいる地域も奥平野浄水場の配水エリアです。

神戸市水道局が公開している「水源別給水区域図」を見ると、奥平野浄水場は市街地の一部へ給水し、水源として「布引貯水池・布引湧水など」と記されています。
しかし、この図を見ても布引の水が実際に何%含まれているのかまでは分かりません。
そこで今回、その実際の割合を確認しました。
普段から水道水をおいしく感じていたこともあり、「実際に布引の水はどの程度使われているのだろう」と以前から気になっていました。
2026年8月27日に参加したダム工学会「第3回 水道ダム交流講演会 神戸編」で、この疑問について確認することができました。
そもそも「布引水源」とはどこなのか
布引水源というと、五本松堰堤、いわゆる布引ダムだけを思い浮かべるかもしれません。
しかし、実際にはダムだけではありません。
五本松堰堤をはじめ、分水堰堤、放水路、谷川橋、鼓ヶ滝取水場、雌滝取水堰堤、砂子橋など、複数の水道施設によって一つの水源システムが構成されています。
8月27日の見学会では、神戸市水道局から布引水源地全体を示した俯瞰図をいただきました。
水道局提供「布引水源地」俯瞰図

この図を見ると、「布引の水」が単純にダムから一本の管で浄水場へ送られているのではなく、谷全体に水道施設が配置されていることがよく分かります。
関連記事:布引水源から奥平野浄水場までの経路はこちら
布引の水は現在も奥平野浄水場へ送られている
布引貯水池の水は布引谷を下り、雌滝取水堰堤で取り込まれ、砂子橋などを経て奥平野浄水場へ送られています。
この水の道は明治期に整備されたもので、現在も神戸市の水道システムの一部として使われています。
現在の布引の滝

奥平野浄水場

公開されている数字だけでは割合が分からなかった
神戸市水道局の公表資料を見ると、
布引貯水池の水源確保量 18,000m³/日
奥平野浄水場のろ過能力 60,000m³/日
という数字があります。
これだけを単純に割れば、
18,000 ÷ 60,000 = 30%
です。
しかし、この30%をそのまま「奥平野の水道水に占める布引水の割合」と考えることはできません。
18,000m³/日は布引貯水池の水源確保能力。
60,000m³/日は奥平野浄水場の最大ろ過能力。
どちらも実際の1日平均運用量ではないからです。
そこで、8月27日の講演会で現在の実際の水量について質問しました。
実際には布引水源が約41%
講演会後、神戸市水道局で実際の運用数値を確認していただきました。
確認できた数字は、
奥平野浄水場から配水される水量
約34,000t/日
そのうち、
布引水源
約14,000t/日
でした。
したがって、
14,000 ÷ 34,000 ≒ 41.2%
となります。
つまり現在、奥平野浄水場から配水される水のうち、
約41%が布引水源
ということになります。
残りの約59%は、主として阪神水道企業団から受水する淀川水系の水です。
| 水源 | 1日あたり | 割合 |
|---|---|---|
| 布引水源 | 約14,000t | 約41% |
| 主に淀川水系 | 約20,000t | 約59% |
| 合計 | 約34,000t | 100% |
※2026年8月27日の講演会後に確認いただいた数値をもとに算出。
烏原貯水池の31,000m³/日は現在の実使用量ではない
奥平野浄水場について調べる際、もう一つ注意が必要なのが烏原貯水池です。
神戸市の資料には烏原貯水池について31,000m³/日という数字があります。
しかし、これは現在毎日使われている水量ではありません。
神戸市水道局技術企画課への事前問い合わせでは、烏原貯水池は2012年を最後に水道水源としての利用を行っておらず、2018年度以降は認可上も「予備水源」となっているとの回答を得ています。
したがって現在の奥平野の水源割合を考える際に、
布引+烏原+淀川
として烏原31,000m³/日を加えることはできません。
関連記事:烏原貯水池がなぜ現在使われていないのかはこちら
「布引は30%」ではなく、実運用では約41%だった
今回の調査で面白かったのは、公表されている施設能力から想像した数字と、実際の運用量に差があったことです。
能力値だけなら、
18,000 ÷ 60,000 = 30%
でした。
ところが実際の運用量を確認すると、
14,000 ÷ 34,000 ≒ 41%
でした。
つまり、奥平野浄水場では最大能力いっぱいまで処理しているわけではなく、実際の運用では布引水源の存在感が能力値の単純比較以上に大きいことになります。
これは公表されている施設能力だけを見ていても分からなかった数字です。
125年以上前に造られた水源が、現在も約4割を支える
布引五本松堰堤が完成したのは明治33年(1900)。
その後、豪雨や阪神・淡路大震災を経験し、何度も補修・耐震補強が行われてきました。
雌滝取水堰堤や砂子橋など、明治期に整備された水道施設も現在まで使われています。
そして、その布引水源から現在も約14,000t/日の水が供給され、奥平野浄水場から配水される水の**約41%**を占めている。
布引水源は「昔の神戸水道の遺産」ではありません。
125年以上たった現在も、神戸市民が日常的に使う水道水を支える現役の水源です。
五本松堰堤の現在写真

水道水がおいしく感じられる理由の一つなのか
私の住んでいる地域も奥平野浄水場の配水エリアです。
以前から水道水をおいしく感じていたため、布引水源の割合には特に興味がありました。
今回、実際に約41%という数字を知ることができました。
ただし、
「布引水源が41%だから水がおいしい」
と単純に結論づけることはできません。
水道水の味には、水源だけでなく、水質、硬度、水温、浄水処理、残留塩素、配水管の状態や滞留時間など、さまざまな要素が関係します。
それでも、身近な蛇口から出てくる水のかなりの部分が、今も六甲山地の布引水源によって支えられていることを知ると、普段飲んでいる水の見え方が少し変わってきます。
質問して初めて分かった「41%」
今回の約41%という数字は、公開資料の能力値だけを眺めていてもたどり着けませんでした。
事前に資料を調べ、
「実際にはどれくらい使っているのか」
という疑問を持って現地へ行き、講演会で質問したことで、現在の運用数字を確認することができました。
布引ダムそのものを見るだけでなく、その水が現在どれだけ使われているのかまで追えたことが、今回の一連の調査で最も大きな収穫の一つでした。
布引ダムシリーズ全4回
第1回|造る

第2回|運ぶ
布引ダムの水はどう神戸へ送られたか|布引の滝から奥平野浄水場まで

第3回|守る



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