烏原水源放水門前面2本の配管の正体|明治期近代土木遺産と鈴蘭台処理場の接続構造

放水門手前を通る塚本汚水幹線

概要
1905年(明治38年)に竣工した烏原水源地(立ヶ畑堰堤・烏原水源放水門)は、神戸近代水道史を代表する明治期近代土木施設です。
しかし現地調査を続ける中で、烏原水源放水門前面に確認できる2本の巨大配管という、“明治だけでは説明できない現在進行形の構造”が見えてきました。

神戸市建設局下水道部への確認、神戸市HP『鈴蘭台処理場概要』、そして現地観察を照合すると、この2本は単なる付属設備ではなく、

明治期水源施設 × 現代下水インフラ × 処理水再利用

が交差する、神戸水管理120年史の接続構造でした。


目次

なぜ烏原水源放水門前面の2本の配管が気になったのか

烏原水源放水門正面に立つと、明治期の石造放水門前に、明らかに時代の異なる2本の巨大配管が横断しています。

一見すると放水門附属設備にも見えますが、その正体は水道局施設ではなく、現在の神戸下水道インフラでした。


烏原貯水池 放水門
放水門烏原水源放水門全景。明治38年竣工の近代土木遺産前面に、現代インフラ配管が交差する。
烏原水源放水門前面に確認できる2本の配管。明治期放水門前に現代下水道施設が接続している。
烏原水源放水門前面に確認できる2本の配管。明治期放水門前に現代下水道施設が接続している。

神戸市建設局への確認|烏原水源地と鈴蘭台処理場はどう接続しているのか

現地調査を進める中で、烏原水源放水門前面に確認できる2本の配管が、明治期の放水門附属設備ではなく、現在の都市インフラと関わる可能性が浮上しました。

公開資料では、鈴蘭台処理場の放流先として
「石井川・新湊川」
の記載を確認。

さらに神戸市水道局浄水統括事務所への確認では、

「水道局所管ではなく、鈴蘭台処理場と接続されているパイプと思われる」

との回答を得ました。

そこで、明治期に整備された近代土木施設(烏原貯水池堰堤・烏原水源放水門)と、現在の下水インフラがどのように接続しているのかを正確に理解するため、神戸市建設局下水道部へ以下の2点を照会しました。

確認した内容

1.烏原水源放水門前面に確認できる2本の配管の正式名称および用途
2.鈴蘭台処理場から石井川・新湊川方面へ放流される処理水ルート(特に石井川方面への接続構造)

あわせて、放水門背面(山側)合流水路の現地写真も添付し、

「明治期近代土木施設と現在の都市インフラが、現地構造としてどのように関わっているのか」

という観点から確認を依頼しました。

烏原水源放水門背面(山側)合流水路
烏原水源放水門背面(山側)合流水路

神戸市建設局回答|2本の配管の正式名称

神戸市建設局下水道部施設課への確認により、2本の配管は以下の通り判明しました。

手前の太い配管

正式名称:塚本汚水幹線
用途:汚水を下流の西部処理場へ送水する主要幹線

奥の細い配管

正式名称:水リサイクル管
用途:高度処理水を新湊川および兵庫区松本地区せせらぎ水路へ送水

つまり、ここは

明治:濁水バイパスさせる放水門
現在:汚水輸送+再生水供給

という、時代を超えた水インフラ接続点だったのです。


放水門手前を通る塚本汚水幹線
放水門手前を通る塚本汚水幹線。神戸市西部処理場へ汚水を送る現代下水インフラ。放水門奥側の水リサイクル管。新湊川・松本地区へ高度処理水を供給する再利用設備。

神戸市公開資料に答えはあった|鈴蘭台処理場概要図

神戸市建設局から添付された送水管図は、神戸市HP『鈴蘭台処理場概要』掲載図と同一でした。

つまり、情報自体は公開されていたものの、現地構造と照合して初めて、

「烏原水源放水門前面2本の配管」
として意味が見えてきたことになります。


神戸市HP『鈴蘭台処理場概要』より。鈴蘭台処理場から新湊川・松本地区へ至る送水管ルート。
出典:神戸市HP『鈴蘭台処理場概要』
神戸市HP『鈴蘭台処理場概要』より。鈴蘭台処理場から新湊川・松本地区へ至る送水管ルート。
出典:神戸市HP『鈴蘭台処理場概要』

鈴蘭台処理場とは何か|山中に建設された現代下水高度処理施設

神戸市HP『鈴蘭台処理場概要』によれば、鈴蘭台処理場は、

「処理区から約2kmの下水トンネルを設け、山中に建設」
された施設です。

特徴

  • 山間部立地・用地難対応
  • 沈砂池高所配置による自然流下
  • 3系列分割施設
  • 凝集剤併用型嫌気無酸素好気法(A2O法)
  • 砂ろ過+オゾン処理
  • 新湊川水質保全
  • 処理水再利用(水力発電・松本地区せせらぎ・防災用水)

鈴蘭台処理場。山中に建設された神戸北部の高度下水処理拠点。
鈴蘭台処理場。山中に建設された神戸北部の高度下水処理拠点。

鈴蘭台処理場付近の水管橋。烏原水源放水門前面配管へとつながる現代インフラの起点。
鈴蘭台処理場付近の水管橋。烏原水源放水門前面配管へとつながる現代インフラの起点。

神戸市HP『鈴蘭台処理場概要』より。山中の処理場構造と高度処理・再利用機能。
出典:神戸市HP『鈴蘭台処理場概要』
山中の処理場構造と高度処理・再利用機能。出典:神戸市HP『鈴蘭台処理場概要』

石井川放流は現在どうなっているのか

神戸市HP概要では石井川・新湊川・松本通が示されますが、神戸市建設局回答では、

現在、処理水は原則として石井川へ放流されていません。

処理水は湊川ポンプ場を経由し、

  • 新湊川
  • 松本地区せせらぎ水路

へ送られています。

鈴蘭台処理場から石井川・新湊川方面へ放流される処理水のルートは、 図のオレンジの線とおりと回答。出典:神戸市HP
鈴蘭台処理場から石井川・新湊川方面へ放流される処理水のルートは、 図のオレンジの線とおりと神戸市建設局回答。出典:神戸市HP出典:神戸市HP『鈴蘭台処理場送水管ルート図』

松本地区せせらぎ水路へ|処理水は“街の潤い”へ変わる

神戸市HP『鈴蘭台処理場概要』でも、

「高度処理水を兵庫区松本地区に放流し、街並みに潤いを与え、非常時には防災用水として活用」

とされています。

つまり、烏原水源放水門前で確認できた細い1本は、

山中の処理場

水リサイクル管

新湊川・松本せせらぎ通り

市民生活の景観資源

という、神戸の水循環構造を担う重要なラインでした。


【写真挿入⑩】
キャプション:松本せせらぎ通り。水リサイクル管を通じて送られた高度処理水が、街中の水景として再利用されている。
松本せせらぎ通り。水リサイクル管を通じて送られた高度処理水が、街中の水景として再利用されている。

松本せせらぎ水路で確認した錦鯉。高度処理水は都市インフラであると同時に、市民生活に潤いを与える景観にもなっている。
松本せせらぎ通り水路で確認した錦鯉。高度処理水は都市インフラであると同時に、市民生活に潤いを与える景観にもなっている。

ここが重要|明治の「選別」と現代の「再利用」

烏原水源地(1905)

濁水を池に入れない
= 水を選ぶ

鈴蘭台処理場(現代)

汚水を高度処理し再利用する
= 水を再生する

つまり神戸は、

明治:選別
現代:浄化+再利用

へと、水管理思想を進化させてきたのです。


結論

烏原水源放水門前面の2本の配管は、単なる現代設備ではありません。

それは、

明治期近代土木遺産(烏原水源地)
現代下水インフラ(鈴蘭台処理場)
再生水利用(新湊川・松本地区)

を一地点で接続する、“神戸水管理120年史の交差点”でした。

烏原水源地とは、
過去の遺産ではなく、

明治の知恵が、現代都市インフラへ接続し続ける場所。

神戸という都市の水構造を、120年単位で読み解ける極めて稀有な現場なのです。

参考文献


・神戸市建設局下水道部『鈴蘭台処理場概要』(神戸市HP公開資料)
・神戸市水道局浄水統括事務所 回答
・神戸市建設局下水道部施設課 回答
・現地撮影・踏査(2026年)

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