2026年4月20日、午前5時24分。
菊水山山頂で日の出を迎えた。
空気は澄み、山の輪郭がゆっくりと浮かび上がる。
この日も、いつも通り山は静かだった。
下山の途中、登山道整備を続ける
烏原登山会の岡本学さんに話を伺った。


■「山が好きだから」続いている
岡本さんの活動はボランティアである。
「ボランティアなんでね。やっぱり山が好きだから。
自然をね、なかなか抜けられない」
理由はシンプルだが、20年という時間がその言葉の重みを物語る。
■完成した道を誰かが歩く、それがやりがい
「綺麗に出来てね、出来上がってね、
皆さんがそこを歩いて登ってくれて。
それがいいですね。やりがいがあります」
整備された道は、特別に説明されることもない。
しかし確実に、登山者の足元を支えている。

■丸太は“消耗品”である
現在の登山道に設置されている丸太。
その多くは岡本さんの手によるものだ。
丸太は全長約1メートル、重さは約2キロ。
「湿気の多いとこやったら10年ぐらいで腐る」
設置して終わりではなく、定期的な交換が必要になる。
■設置場所は“経験”で決まる
「ここちょっと人が踏んだら崩れそうかな、
というところに入れていくんです」
見た目ではわかりにくいが、
登山道の弱い部分を見極めて補強していく。

■最も過酷なのは「運搬」
「一番しんどいのは丸太の運搬ですね」
現在は森林整備事務所により、
丸太は山頂付近まで運ばれる。
そこから先は、人の手で運ぶ。
かつては、麓から丸太を背負い上げていたという。
「前は3本ぐらい背負って上げてました」

■危険と隣り合わせの作業
「2回ほど転落したけど、やめようと思ったことはないですね」
丸太を背負った状態での転落。
大きな事故につながってもおかしくない。
それでも作業は続いている。

【📷写真⑦:岩場・急斜面の現場】
■石もすべて人力で運ぶ
丸太だけではない。
補強に使う石も運搬されている。
「ここに土がないから、下から石を持って上がった」
一つ一つの作業が、積み重ねられている。
■20年前との違い
かつては車で資材を運べた場所も、
現在は搬入できない場所が増えている。
その結果、山頂からの運搬という
より負担の大きい方法に変わった。
■やめようと思ったことはない
「やめようと思ったことはないですね」
淡々とした言葉だが、
20年の継続を支えているのは、この姿勢である。
■後継者はいない
「誰がね、私の後やってくれるんかな」
現在、明確な後継者はいない。
菊水山の登山道は、
個人の整備と行政の整備によって成り立っている。
■山を歩く人へ
「もっと多くの人に山と関わってほしい」
この言葉を受けて、
筆者自身も烏原登山会へ入会した。
組織に属することを避けてきたが、
この現場を見たとき、その選択は自然なものだった。
■関連記録(森林整備)
岡本さんが山に入れなかった時期、
菊水山では神戸市森林整備事務所による大規模整備が行われている。

個人と行政、
両方の力で山は維持されている。
菊水山に刻まれた道と人の記録はこちらから

■まとめ
菊水山の登山道は、
自然にできたものではない。
誰かが手を入れ、
誰かが支え続けている。
その一人が、岡本学さんである。
この記録が、
山の見方を少しでも変えるきっかけになればと思う。
※本記事は2026年4月20日の現地取材に基づく記録です


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