コロワイドが展望する飲食業のマーチャンダイジング戦略・大戸屋をTOBへ
2020年7月9日付けの日本経済新聞は外食大手のコロワイドが定食店を手がける大戸屋ホールディングの買収に乗り出すと保じました。
10日にもTOB(株式公開買い付け)を開始、現在19%の保有比率を5割程度にして子会社にする。新型コロナウイルスの感染拡大で外出が減り、飲食店の経営は悪化している。子会社化によって食材や配送の共通化などを進めて、立て直しにつなげる。(関連記事3面に)
大戸屋HDの8日終値は2113円。4割程度を上乗せした1株3000円程度でTOBするとみられる。大戸屋HDの経営陣がTOBに反対して、敵対的TOBに発展する可能性がある。取得総額は100億円弱になる見通し。買い付けには上限を設けることで、TOB後も大戸屋HDの上場は維持させるもよう。
コロワイドは2019年に大戸屋HDの創業家から株式を譲り受けて筆頭株主となった。大戸屋HDは新型コロナウイルスによる営業自粛もあって既存店売上高の減少が続いている。20年3月期には上場来初の最終赤字に転落した。
コロワイドはコスト削減策を提案してきたが、大戸屋HDの経営陣と折り合えなかった。
多様な飲食業を傘下におくコロワイドグループ
コロワイドグループは元々は居酒屋「甘太郎」を開業したのがそのルーツである。神奈川県逗子で甘味処を転換して1977に居酒屋「甘太郎」として開業した。
その後は買収などでその事業を拡大してきた。有名なところで言えば、「牛角」、「かっぱ寿司」、「FRESNESS BURGER」、「しゃぶしゃぶ温野菜」などまさに多彩といったところです。
クリスチャンディオールやルイヴィトンをなど数々のブランドを抱えるLVMHのようにポートフォリオ戦略を駆使して、リスクを分散して、あるブランドが調子がふるわなくても、あるブランドが調子がいいといった状況は景気によって必ず起こります。例えば、景気がいい時は、高級ブランドが調子がいいですが、景気が悪くなるとそこまでお金をブランドに出せないといいった消費者が出てきます。
ブランド業態を多様にしておく事は、リスク分散のという意味合いを持っているのです。
出典:コロワイドグループHP、会社概要より
規模を活用したマーチャンダイジング戦略
もう一つLVMHとの大きな違いは食に特化しているという事です。
マクドナルドを創業した藤田田さんの「ユダヤの商法」を見ると、昔からの商売の鉄則として、「女」と「口」を狙えとあります。
「女」というのは女性をターゲットにしろという事です。例えば指輪や首飾りのような装飾品、香水、化粧品など女性をターゲットにした商品です。
例えば、デパートにいって見れば分かりますが、7階のフロアーのうち、男性売り場は1階しかありません。ほとんどが女性向けの売り場です。消費というものが女性によって行われているのが分かります。
女性というのは、おおよそ「見栄張りな生き物」です。
では、「阪急メンズ館や伊勢丹メンズ館はどうなの?」という質問が聞こえてきます。
そう思われる方は、ぜひ阪急メンズ館や伊勢丹メンズ館に行ってみてください。多くの買い物客は女性です。
女性が自分のパートナーや家族などにプレゼントや綺麗なブランド服を着せる為に、買い物しているのが大半で、男性自身が自分の為に買いにくるようなケースは少数派です。
「口」を狙え
「ユダヤの商法」でいう、口を狙えという事は、食べ物の事です。
人間は食べて行かないといきていけません。この体を燃やす為には、食べ物は燃料ですから必需品です。
今回のコロナ騒動を見ても、コンサートなどのイベントや、美術館はしまってもスーパーマーケットや飲食店は休業対象にならなかった事からも、明白でしょう。
コロワイドグループの戦略は、その「口」、つまりは食に特化したというところです。
そしてマーチャンダイジング戦略というのは、コロワイドグループ全体の規模を活用して、販売力と食品加工の内製化を推進するというものです。
まずはその購買力。大量に仕入れる事によって、規模のメリットによりコスト交渉力が強くなります。
そして、セントラルキッチンで食品加工する事により、また効率化を計ります。
販売力は、広告や宣伝、出店戦略などでシナジー効果を狙います。
新型コロナの影響により、今後の飲食店は大きなチャレンジに直面し、環境に適応できたところには大きなチャンスが広がっています。
コロワイドグループはこれまでM&Aを通して、下記のように売り上げを伸ばしてきました。2019年3月の決算で2443億円です。
今回の定食チェーンである「大戸屋」のTOBが、今後のグループに与える展望と戦略にどう影響を与えるのか、注視していきたいと思います。
出典:コロワイドグループHP、会社概要より
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