ハートフル湊川を通りかかると、
「わらびもち館 本家 治五郎 湊川店」 の店頭に、テナント募集の案内が貼られていました。
2025年8月にオープンしたお店だったので、まだそれほど時間が経っていない印象があり、少し驚きました。
【写真:閉店後・テナント募集の貼り紙がある店舗外観】

ハートフル湊川は、東山商店街のすぐ隣にある商業施設です。
距離にすればほんのわずかで、日常の買い物動線としては東山商店街や湊川市場とほぼ一体の場所にあります。
このことをFacebookグループ「ハートフル湊川。」に投稿したところ、思った以上に多くのコメントが寄せられました。
単なる閉店情報への反応というよりも、
「この街に合う店とは何か」
「湊川で商売をするには何が大事なのか」
を考えさせられる内容でした。
開店当初は、上品で高級感のある店構えだった
開店当初の店舗は、木目調の落ち着いた内装で、かなり上品な雰囲気がありました。
店名の看板や照明、陳列台の雰囲気も整っていて、いわゆる昔ながらの商店街の店というより、少し高級感のある和スイーツ店という印象でした。
【写真:開店当初の店舗外観】

商品そのものが悪かったという話ではありません。
むしろ、店構えだけを見ると、しっかり作り込まれたお店だったように見えます。
ただ、コメントを読んでいると、この「高級感」が湊川の日常の買い物感覚と少し距離を生んでいたのかもしれない、と感じました。
気になっていたけれど、入らなかった人たち
コメントで多かったのは、
「興味はあった」
「一度食べてみたかった」
「でも結局、入らなかった」
という声です。
これは、地域マーケティングの視点で見ると非常に大きなポイントです。
まったく関心を持たれていなかったわけではありません。
むしろ、店の存在に気づいていた人、気になっていた人は一定数いました。
しかし、その関心が購入にはつながらなかった。
ここに、今回の難しさがあったのだと思います。
「750円のドリンク」「800円前後のわらび餅」は高かったのか
店頭には、わらびもちドリンクも並んでいました。
小豆、ほうじ茶、抹茶、珈琲などの種類があり、価格は750円と表示されていました。
【写真:750円のわらびもちドリンク】

わらび餅800円前後、ドリンク750円という価格は、商品そのものの価値だけを見れば、必ずしも高すぎるとは言い切れません。
本わらび粉や素材にこだわった商品であれば、それなりの価格になることもあります。
ただ、湊川・東山周辺は、日常の買い物文化が根づいたエリアです。
魚、肉、野菜、惣菜、日用品。
毎日の暮らしの中で使う人が多い場所です。
その感覚の中では、
「日常のおやつとして気軽に買うには少し高級」
と受け止められた方もいたのかもしれません。
重要なのは、価格そのものよりも、
その価格に見合う価値が通りすがりの人に伝わっていたか
という点です。
価値が伝わらなければ、人は入らない
コメントの中には、陳列や商品の説明が分かりにくかったという声もありました。
たとえば、
何が800円なのか
どのくらいの量なのか
なぜその価格なのか
どんな素材を使っているのか
どんな食べ方がおすすめなのか
これらが一目で伝わらないと、通りすがりの人は足を止めにくくなります。
特に、湊川のように買い物のテンポが早い場所では、お客さんは長い説明を読んでから判断するというより、店頭の雰囲気や価格表示、商品の見え方で一瞬で判断します。
良い商品であっても、
価値が伝わらなければ、高く見えてしまう。
これは、地域のお店にとって非常に大事な視点だと感じました。
高級感と入りやすさのバランス
コメントでは、
「土地柄に対して少し高級感を出しすぎていたのでは」
という意見もありました。
高級感そのものが悪いわけではありません。
むしろ、商店街やモールに新しい雰囲気を持ち込むことは大切です。
ただ、湊川・東山周辺では、高級感だけが前に出ると、
「自分向けの店ではないかもしれない」
と感じる人も出てきます。
この街では、
少し良いものだけれど、気軽に試せる
という距離感が大切なのかもしれません。
少量のお試しサイズ、分かりやすいセット、店頭での試食、写真付きの説明、買いやすい価格帯の商品。
そうした入口があれば、最初の一歩は変わった可能性があります。
接客や店頭の空気も商品価値の一部
別のコメントでは、店員さんの雰囲気や、店頭の印象についても触れられていました。
これは厳しい意見ではありますが、地域のお店ではとても大事な点です。
商店街やモールでは、商品だけが売られているわけではありません。
店の人の表情、声かけ、明るさ、店頭の清潔感、入りやすさ。
それらすべてが、商品の価値として受け取られます。
特に初めて入るお店では、
「買ってみようかな」
と思える空気があるかどうかが大きい。
地域密着の商売では、接客もマーケティングの一部なのだと感じます。
商店街側もSNSで盛り上げようとしていた
一方で、ハートフル湊川全体としては、SNSを使った取り組みも行われていました。
館内には、Instagramの写真コンテストのポスターも貼られていました。
【写真:ハートフル写真コンテストのポスター】

ポスターには、
「ハートフル写真コンテスト」
「#ハートフルコンテスト2025」
とあり、賞品にはお肉や本わらび餅なども掲載されていました。
私もこの写真コンテストには応募してみました。
つまり、商業施設側も、SNSを活用して人を呼び込もうとしていたのだと思います。
ただ、SNSで知ってもらうことと、実際に店頭で買ってもらうことは別です。
知ってもらう。
気になってもらう。
足を止めてもらう。
入ってもらう。
買ってもらう。
また来てもらう。
この一つひとつの段階に、工夫が必要なのだと感じました。
コメント欄は、無料のマーケティング調査だった
今回寄せられたコメントを読んでいると、これは単なる感想欄ではなく、
地域の買い物客によるマーケティング調査
のようにも見えました。
そこには、次のような声がありました。
興味はあったが、入らなかった。
価格が少し高く感じた。
商品の内容が分かりにくかった。
高級感が街の雰囲気と少し合っていなかった。
接客や店頭の空気が入りにくかった。
日常使いの買い物エリアでは、気軽さが大事。
これらは、どれも後から分析すれば当たり前のように見えるかもしれません。
しかし、実際に商売を始める前にここまで地域の感覚をつかむのは簡単ではありません。
だからこそ、地域の声を丁寧に拾うことには意味があります。
ハートフル湊川で考える「街に合う店」
今回感じたのは、湊川・東山周辺には、この街ならではの買い物感覚があるということです。
安ければよい、というわけではありません。
高級なものが合わない、というわけでもありません。
ただ、街に合うには、
価格
見せ方
入りやすさ
接客
日常使いの感覚
がうまく噛み合う必要があります。
良い商品であっても、その価値が伝わらなければ、人は入らない。
立地が良くても、街の買い物動線に合わなければ、なかなか続かない。
これは、ハートフル湊川だけでなく、地域の商店街や小さなお店全体に通じる話だと思います。
また新しいお店が入ることを願って
せっかく湊川に出店してくれたお店だっただけに、残念です。
ただ、今回多くのコメントが寄せられたこと自体、この場所に関心を持っている人が多いということでもあります。
ハートフル湊川も、東山商店街も、湊川市場も、この一帯は今も多くの人が行き交う生活の場所です。
またこの場所に、街の空気に合った新しいお店が入ってくれることを願っています。
今日も、湊川を歩いて見えた風景です。


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