Kobe Alps Labでは、菊水山、烏原貯水池、大楠公六百年祭など、神戸の山や水道遺産、地域史を、現地踏査と資料調査をもとに記録しています。
ただ、私が「現地で迷いながら記録すること」の大切さを強く意識したのは、2017年にNUCB Business SchoolからEDHEC Business Schoolへ留学した時期でした。
当時、NUCBからEDHECへ社会人がダブルディグリープログラムで長期留学する実例はほとんどなく、入学要件、現地生活、住居、銀行口座、交通、授業の進み方まで、実際に行ってみないと分からないことばかりでした。
2017年8月、私はEDHEC Business Schoolのダブルディグリープログラムに参加するため、フランス北部のRoubaixへ渡りました。
この記事は、渡仏直後から最初の1ヶ月の日記をもとに、これからEDHECやヨーロッパのビジネススクールへ留学する人に向けて、現地で本当に役立つことをまとめた記録です。
Kobe Alps Labの通常テーマとは少し離れますが、後から来る人のために現地の記録を残すという意味では、今の活動にもつながる原点の一つです。
1. 到着直後に困るのは、授業よりも生活インフラ
フランスに着いて最初に苦労したのは、授業ではありませんでした。
鍵の受け渡し、Wi-Fi、SIM、買い物、洗濯、シャワー、銀行口座、交通機関。生活の基本を整えるだけで、かなりの時間と体力を使いました。
Roubaixのシェアハウスは、螺旋階段を上がった先の屋根裏部屋。シャワーの水は床に流れ、洗濯機を使うと水が溜まり、Wi-Fiは部屋まで届かない。日本では当たり前だったことが、フランスでは一つひとつ自分で確認し、交渉し、解決していく必要がありました。
住んでいたシェアハウスの外観


Roubaixの街並み

EDHEC留学中に暮らしたRoubaixの街。到着直後は、住居、Wi-Fi、買い物、交通機関など、生活を立ち上げるだけで精一杯だった。
2. Wi-FiとSIMは、最初に整えるべき生命線
現地で最初に痛感したのは、インターネット環境の重要性です。
部屋でWi-Fiが使えないだけで、調べ物、翻訳、地図、学校との連絡、生活手続きのすべてが不便になります。
SIMを買うにも、店員とのやり取り、契約、設定、IPアドレス、対応機種などで苦労しました。フランスでは、買い物ひとつでも担当者が分かれていたり、順番待ちが長かったり、日本のようにすぐには進みません。
後から振り返ると、到着後すぐに使える通信手段を確保することが、現地生活の不安をかなり減らします。

3. フランス語ができないと、生活コストが上がる
EDHECの授業は英語で行われます。
しかし、生活は英語だけでは回りません。
銀行、スーパー、交通機関、修理業者、管理会社、携帯ショップ。日常生活の現場では、フランス語が必要になる場面が多くありました。英語が通じる人に出会うと、それだけで助かったと感じるほどです。
最低限でも、
- Bonjour
- Merci
- Parlez-vous anglais ?(英語でお願いできますか?)
- Je voudrais…
- Combien ça coûte ?
- Où est… ?
くらいの生活表現は覚えておくと、心理的な負担がかなり減ります。
フランスでの生活は、買い物ひとつでも学びの連続だった。英語で授業を受けられても、日常生活では最低限のフランス語が大きな助けになる。
4. 自転車を使えると、生活の自由度が一気に上がる
Roubaix、Lille、EDHEC周辺で生活するうえで、自転車は大きな助けになりました。
トラムやバスは便利ですが、工事や乗り間違い、駅の場所、チケットの仕組みなど、慣れるまではかなり戸惑います。
自転車を使えるようになると、EDHEC、スーパー、Lille中心部、近隣の公園まで、自分のペースで動けるようになります。現地での自由度が一気に上がりました。
ただし、登録方法、利用時間、返却エラーなど、ここでも失敗はありました。失敗しながら覚えていくしかありません。


5. “Because I made a lot of mistakes”
最初の1ヶ月を振り返ると、失敗ばかりでした。
違う駅で待つ。バスを間違える。チケットの仕組みが分からない。SIMが使えない。銀行口座が開けない。Wi-Fiがつながらない。洗濯機から水があふれる。
でも、その失敗があったからこそ、少しずつ現地で生きる力がついていきました。
ある時、クラスメートに「Yuichiはよく知っているね」と言われ、私はこう答えました。
Because I made a lot of mistakes.
たくさん失敗したから、電車の乗り方も、チケットの買い方も、どこで何をすればいいかも覚えた。
これは、最初の1ヶ月を象徴する言葉だったと思います。
シェアハウスのキッチン(住んでいたのはフランス人、ベルギー人、中国人、インド人、日本人の私)
“Because I made a lot of mistakes.” 最初の1ヶ月は失敗の連続だったが、その失敗が現地で生きるための地図になっていった。
6. EDHECに入って驚いたこと:日本人が自分一人だった
Welcome Sessionが始まると、世界中から学生が集まっていることを実感しました。
中国、インド、イタリア、ドイツ、モロッコ、メキシコ、ブラジル、デンマーク、タイ、フィリピン。多様な国籍の学生が集まる中で、日本人は私一人でした。
これは寂しさでもあり、同時に大きなチャンスでもありました。
日本人であること自体が、多様性の中では一つの個性になります。ただし、黙っているだけでは埋もれます。自分の経験、職歴、視点をどうクラスに貢献させるかを考える必要がありました。
EDHECのキャンパス

7. EDHECで感じた欧州型ビジネススクールの空気
EDHECのWelcome Sessionで印象に残ったのは、登壇者に女性が多かったことです。
日本のビジネススクールや企業ではあまり見ない光景で、教育界における女性の活躍を強く感じました。
また、EDHECでは繰り返し、
- Engagement
- Innovating
- Impact
という言葉が語られました。
単に知識を学ぶのではなく、世界にどうインパクトを与えるか。
さらに、良い学生生活のためには、
- Study
- Sleep
- Socialization
のバランスが大切だと説明されました。
勉強だけでなく、睡眠、交流、人とのつながりまで含めて学びと捉えている点が印象的でした。
EDHECクラス親睦会
EDHECでは、Engagement、Innovating、Impactという言葉が強調された。知識だけでなく、社会にどう影響を与えるかが問われていた。
8. 最初の1ヶ月で後輩に伝えたいこと
これからEDHECやヨーロッパのビジネススクールに行く人に伝えたいことは、次の通りです。
到着後1週間は、何も予定通りに進まないと思った方がいいです。
SIM、Wi-Fi、銀行口座、住居書類、交通手段は、できるだけ早く整えるべきです。
英語で授業を受けられても、日常生活ではフランス語が必要になります。
最低限の生活表現だけでも覚えておくと、かなり助かります。
そして、失敗を恐れないこと。
最初にたくさん失敗した人ほど、早く現地に慣れます。
日本人が少ない環境では、日本人であること自体が多様性になります。
ただし、自分の強みを言語化し、クラスにどう貢献するかを考えなければ、存在感は出せません。
EDHECの資料
最初の1ヶ月は、生活を立ち上げながら、自分がEDHECで何を学び、どう貢献できるのかを考える時間でもあった。
おわりに:失敗した分だけ、後から来る人の地図になる
当時は、NUCBからEDHECへ社会人がダブルディグリープログラムで留学する実例がほとんどなく、何をするにも手探りでした。
でも、分からなかったこと、困ったこと、失敗したことを記録しておけば、それは後から来る人の地図になります。
この最初の1ヶ月の日記は、私にとっては混乱と孤独と失敗の記録です。
しかし、これからEDHECへ向かう人にとって、少しでも現地で迷わないための参考になればと思います。
Lilleの街。よく通ったPaul
手探りで始まったEDHEC留学。最初の1ヶ月の失敗と発見は、その後の留学生活を支える土台になった。
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