靴下の哲学【タビオ・越智直正さんのリーダーシップ】
かれこれ10年くらい、靴下はタビオの靴下しか履いていない。
タビオの創業者である越智直正さんの靴下に対する哲学が好きだから。
タビオのロングソックスを履いてから、他の靴下製造メーカーが造る靴下は履けなくなった。
その履き心地、ずり落ちない靴下、フィット感、肌に馴染む靴下はまさに皮膚と一体となる。
越智直正さんは普段は裸足で過ごす。足の感覚を研ぎ澄まして、新しく完成した靴下の試着テストを自分の足で行う為だ。今、日本で売られている9割以上の靴下は外国製である。
そんな中、国産の靴下にこだわり、その中でも品質に特化した靴下をタビオ は販売する。
奈良県の広陵町に靴下の街があり、タビオの靴下はそこで作られる。小売業にとって1番の課題は在庫である。
タビオの場合は、少量多品種の靴下を製造する為、在庫をいかに減らすかが課題となる。それで思いついたのが、ラーメン屋方式である。要は、客が注文してから製造するのを理想として、商品が売れたら工場ですぐに製品を補給出来るよう、販売店と工場をコンピューターで繋ぐ。
そのコンピューターネットワークを日本でいち早く構築したのがタビオである。面白いのは、越智直正さんには中卒で丁稚奉公して、靴下の道一筋の方。コンピューターの知識など全くない。
全国からそのコンピューターの販売方式を聞きに多くの知識人がやってくるが、越智直正さんは、こう言う。「例えば長嶋がよく打つからとバットの研究をする奴がおりまっか。バットを振っている人間を研究せんとあきませんやろ」
越智直正さんは今は会長となり、第一線では息子の越智勝寛さんが社長を引継ぎタビオを切り盛りされている。どうしても会いたくて、インタビューのお時間をお願いした。1時間の約束が、半日もお話を伺う事ができた。
本やテレビで聞けない話が多く、やはり実際に現場に行かないとわからない事が多いと改めて思った。タビオの靴下に関してもしかりで、一度その肌感覚を味わって欲しい。
古典から築きあげた経営スタイル
中学しか出ていない越智直正さんは、中国古典から多くを学び、自分の経営スタイルを確立されてきた。人材論は江戸時代の儒学者・荻生徂徠の言葉を用いる。
荻生徂徠の人材論
人材は必ず一癖あるものなり。器材なるが故なり。癖を捨つべからず (荻生徂徠、人材論)
人の長所を初めより知らんと求むべからず。人を用いて、初めて、その長所の現るものなり。
人はその長所のみとらば、即ち可なり。短所をしる要せず。
己が好みに合う者のみを用うるなかれ。
小過を咎むる用なし。ただ事を大切になざば可なり。
用うる上は、その事を十分に委ねるべし。
上にある者は、下の者と才智を争うべからず
かくして、上手に人を用いれば、事に適し、時に応ずる人物、必ずこれあり。
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