日本一の庭園・足立美術館・北大路魯山人のことば・出雲大社寄り道
関西にいる時によく足を運んだ。
足立美術館。日本庭園好きなら一度は訪れたい場所だろう。
東京にきてからはあまり行く機会も減ったが、2019年の年末に岡山の友人を訪ねていった際に再訪する事にした。
横山大観美術館と言われるほどコレクションが多くあり、時期毎に入れ替わる作品と横山大観の水墨画をモチーフにした日本庭園が楽しめるのが魅力。
四季折々の違った表情を楽しむのはもとより、朝昼晩の違った表情の違いを楽しむのもまた乙なものである。
足立美術館の前には「さぎの湯温泉」という小さな温泉街があり、ここでクリスマスに連泊して美術館の朝夕の表情を眺めさせてもらったのはいい思い出だ。
入館料は大人1人2300円といいお値段するが、パートナーズカード会員に入ると2年間で6000円。
もし連泊して美術館をみたい、または2年に3回以上訪れたいと方にとってはとてもお得な制度になっている。
もし足立美術館の近所に住んでいたら間違いなく入会して、毎日のように通うだろう。
日本庭園や横山大観コレクションは定番の楽しみだけど、私にとってのもう一つの楽しみは北大路魯山人の陶器を愛でる事と、その陶器の上に置かれている紙に書かれた魯山人のことばを読む事である。
あんまりいい言葉だったので、美術館の方にお願いして、紙で送って頂いた。
土いじり
個性だとか、創作だとか口でいうのはやすいことだが、現実に表現が物をいうようなことはなまやさしい作業でなし得られるものではない。さあ自由にものを作ってみれと解放されたとしても決して自由なものは出来ないものである。第一過去の人間が作った美術に充分心眼が開かなくては、かなわぬことである。
過去と言っても、千年も二千年も前からの美術・芸術に目が利かなくてはかなわぬことである。
食器師だからというので、陶器ばかり観ているくらいの注視力では乙な器は生まれるものではない。三百年前の器が作りたければ、千年前の美術が分からくてはならぬものである。
「さあ自由にしていいよ」と言われてもできる事が無限にある中から選ばないといけないのである。無限の選択から人間が一手を選ぶ。その中で最善の一手を選ぶ囲碁のように、人間は自分の人生を選択している。それには過去にやってきた事、経験、知識、バランスから選ばれるものであって、「新しい事をしてみたい」と言ったところで、過去の積み重ねが表に出てくる。しかも、それはその分野のみ知ればいいという事でなく、いろんな分野も知らなければならない。何が無駄で、何が無駄でないなんて言えるものでもない。
料理など細民の美食から大名の悪食までに通じていなくては、一人前の料理人とは言い難い。それには恐ろしいまでの努力が必要であって、調理場ばかりで十年、二十年の苦労を積んでみたとて、料理を語るという段階には至らぬものである。
乞食になってみるのもムダなものではない、虚飾で固まった大名料理を経験してみるのもムダではない。本格な床柱を背に大尽を決めこみような事もたびたびあって良い。陶器をする心も、ほぼ同じである。
遊び心とでもいうんでしょうかね。まあ、いろんな事をやってみなさい。いろんな場所に行ってみなさい。いろんな人にあって、話をしてみなさい。という語っているような気がします。最近の政治家の意思決定をみていても、かわいそうかな視野がものすごく狭くなっているような気がします。マスクを支給するにしても、ちょっと商店街を歩いて見れば、民衆の声を聞いて見れば、分かりそうなものです。いつも警備に囲まれて、街など歩けないのでしょう。あとは多様性という事、同じ官僚組織の中で、同じ基準で選ばれた均一規格の人間ばかりで面白みもなく、視野の広い視点を持つ事こともなかなか出来ずにいるのでしょう。
創設者の足立全康さん
足立美術館、本当に奥が深い場所です。この創設者の足立善康さんは、木炭を運搬する仕事より初めて、種銭をため、繊維業、不動産業と事業を拡大しいった方ですね。その著書を読むと大変変わり者であるという事が分かります。
この中で面白いエピソードが紹介されています。ずっと手に入れる事を夢見て、画集から切り抜いて額に入れて毎日のように眺めていた横山大観の「雨霽る」(あめはる)。2年がかりで全ての大観の話がまとまりかけたところ、購入リストから「雨霽る」と「海潮四題・夏」をはずしてくれと売り手から言われました。「一目惚れの女性に2年も通い続けて枕金も決め、さあ床入りという時に、枕をかかえて逃げられるようなもんだ。そりゃあんまりじゃないですか」と管財委員会の前で一席ぶちました。全さ康さんには敵わないですわと、思いつつけた「雨霽る」をとうとう手に入れたのでした。
出雲大社の寄り道に
足立美術館から出雲大社へのアクセスは山陰自動車道経由で車で約1時間くらいのところにあります。出雲大社へ行かれる際は、寄り道に足立美術館へ寄られてみては如何でしょうか。
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