靴下の哲学 vol.2【タビオ・越智直正さんのリーダーシップ】
日本で販売されている靴下ってほとんど輸入品って本当?
“メイド・イン・ジャパン”の靴下にこだわり
タビオは“メイド・イン・ジャパン”の靴下にこだわり、靴下の製造から販売までの事業を一貫して行っている会社だ。今、消費者が買っている靴下の9割以上は輸入品だ。
安い労働力の国で生産し、それを輸入し販売するというのがほとんだ。
靴下だけを扱う企業というのは世界的に見てもかなり珍しい。なぜなら靴下は季節変動商品だからである。基本的に、冬場の売り上げは夏期の7、8倍にもなる。売り上げの単価もウールなどの素材を用いる冬の方が高くなる。その為、夏場は売り上げが低く、さらに高単価の秋冬を仕入れる必要がある為に、資金繰りが厳しくなる。
つまりは、いろんな商品やブランドを取り扱う事でキャッシュフローの波を平準化し、リスクマネジメメントする経営スタイルをとるのが一般的なのだ。
タビオの名前の由来
タビオの由来は“タビ”は日本語の“旅”と“足袋”という語呂合わせで名付けられた。3 創業時の「ダンソックス」から「タビオ」へ社名変更したのは2代目社長である勝寛氏の時代になってからである。新社長に次の代の会社の未来を託した創業者・越智直正氏の想いが込められているように感じる。
タビオの創業者である越智直正氏は1955年に四国・愛媛に生まれる。直正氏が中学卒業後、亡くなった父の遺言により、長兄から、大阪にある靴下卸問屋への丁稚奉公行きを言い渡される。まだ直正氏が15歳の時である。当時、丁稚奉公というと、長い間の住み込み修行との引き換えに、将来の独立を約束された職業訓練制度の様なものを意味した。
直正氏の場合も、丁稚奉公10年勤め上げたのち、独立できることを当時の大将との合意があった。将来の独立がモチベーションであった。しかし丁稚を初めてすぐ、要領を得ない自分、仕事付いていけない自分に気付かされた。それは、15歳の少年にはあまりにも惨めであった。
中国古典から学ぶリーダーシップ・スタイル
当時お店の大将や周りの先輩から散々に指導を受けて、なすすべく道を歩いていると時に古本屋で出会った「孫子の兵法」と出会った。
直正は中学校の担任教師の言葉を思い出す。「直正よ。これからの時代、少なくとも高校卒業程度の学力は身につけんとあかん。丁稚に行っても、勉強しろ。中国古典を読みなさい。中国古典は漢字で書かれているので、最初お前には難しいかもしれないが、読書百遍、意自ずから通ずや」と。
直正は初めて『孫子の兵法』を手に取った。16歳の時である。それ以来、「孫子の兵法」は直正氏の心の支えとなる。
毎晩のように暗唱し、18歳になる頃には、「孫子の兵法」を自分の骨肉となるがごとく染み込んでいた。
直正氏は言う、「基本的に、人生には自分の芯となる考え方を持たねばなりません。しかし、人は自分の都合の言いようにその尺度を伸び縮みさせます。中国の古典を学ぶことで、正確に測る尺度を得られるのです」。
そのように、直正氏にとって中国古典は、日々経営者として求められる意思決定の判断基準となった。勝寛氏によると、「会長は、信仰のような感じで中国古典を読みます。中国古典は会長にとって、経営で困ったときに支えとなる心の拠り所なのです」と。
参考文献
- Ochi, N. (2013). Otoko Ippiki Maketara Akan. [Do not lose as a man]. Tokyo: Japan Management Consultants Association
- Ochi, N. (2016). Kutsushita Baka Ichidai [The last `Japanese`: The story of man who dedicated his life to socks]. Tokyo: Nikkei BP Sha.
- Teramae, T. (2012). Study on building competitive advantage in manufacturing of traditional Japanese. Abstracts of Annual Conference of Japan Society for Management Information in the JASMIN. Annual Conference of Japan Society for Management Information 2012 Autumn(pp275-278). Japan Society for Management Information.
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